労務不能ってどういうこと?

健保/年金

これを読むと、
健康保険法における
「労務不能とは?」
という概念を
映像的にイメージ
できるように
なるかもしれません。

少し長いので、
読み飛ばしながら
お付き合いください。

労務不能の基準

前提知識

「労務不能」の判定は、必ずしも医学的基準によっておこなわなければならないものではなく、その被保険者の従事する業務の種別等を考えて、その本来の業務に堪え得るか否かを標準として、社会通念に基づいて保険者が認定する。

昭和31.1.19保文発340

過去問題

被保険者がその本来の職場における労務に就くことが不可能な場合、支給があるまでの間、一時的に軽微な他の労務に服することにより、賃金を得るような場合には、労務不能に該当するものとして傷病手当金が支給される。

平成16年 健康保険法 問2 ーC

答え:〇 正しい
労務不能の解釈運用の知識
を問う問題です。

解説

健康保険法第98条第1項及び第99条第1項の規定の解釈運用
健康保険法第99条第1項に規定する「療養のため労務に服することができないとき」(労務不能)の解釈運用については、被保険者がその本来の職場における労務に就くことが不可能な場合であっても、現に職場転換その他の措置により就労可能な程度の他の比較的軽微な労務に服し、これによって相当額の報酬を得ているような場合は、労務不能には該当しないものであるが、本来の職場における労務に対する代替的性格をもたない副業ないし内職等の労務に従事したり、あるいは傷病手当金の支給があるまでの間一時的に軽微な他の労務に服することにより、賃金を得るような場合その他これらに準ずる場合には、通常なお労務不能に該当するものであること。

平成15年2月25日庁保険発第4号保保発第225007号
C級講師
C級講師

この問題では上記の
労務不能の解釈運用の知識が
有れば即答できます。

「一時的に軽微な他の労務に服すること」
ができても、
労務不能とされる。
C級講師
C級講師

しかし、
このことを知らない場合は
次の点を
押さえているかどうかです。

「被保険者の本来の業務に堪えうるか否かにより判断」
C級講師
C級講師

(①「一時的に軽微なほかの労務に服する」)
①’「本来の業務でない」ので、
労務不能とされる。

ゆえに、労務不能とは判断できる

ここまでが、
資格試験という
「答えのあるゲーム」の
考え方です。

文章をとりちがえて、浮上する疑問(勘違い)

この過去問題
労務不能かどうか?
について問われています。
しかしながら、

労務不能について問う場合
傷病手当金の支給要件(下記※1を参照)の
枠内の2つ目の範囲内について
(話を限定して、)
正誤判断を問うていると、
捉えることも可能です。

(※1)傷病手当金の支給要件
1:療養のため
2:労務不能(労務に服することができないとき)
3:継続3日の待期期間

実は、そう考えてしまうと、
ややこしい疑問が
浮かび上がってきます。

「傷病手当金が支給されると言い切れるのか?」

この過去問題(再掲載↓)は

被保険者がその本来の職場における労務に就くことが不可能な場合、支給があるまでの間、一時的に軽微な他の労務に服することにより、賃金を得るような場合には、労務不能に該当するものとして傷病手当金が支給される。

平成16年 健康保険法 問2 ーC


細かいことを言うようですが・・・。
傷病手当金の
支給要件(※1)の1と3に
直接的には言及していません。

(※1)傷病手当金の支給要件 
1:療養のため
2:労務不能(労務に服することができないとき)
3:継続3日の待期期間

本来この過去問題は、
労務不能に該当するかどうか
論点です。

ところが、
傷病手当金が
支給されるかどうか?

論点のように思えてきてしまいます。

傷病手当金の支給も
論点と勘違いすると、

勘違いちゃん
勘違いちゃん

継続3日の待期期間がないと
傷病手当金は支給されません。

という屁理屈が
思いついてしまします。

前提知識Ⅰ「論点とは」

一般的に
論点という
言葉の意味は
次の通りです。

論点(ろんてん)
岩波国語辞典:議論の中心となる問題点。
新明解国語辞典:議論、論説、論文などの内容の中心になる事柄また論争の中心点。

各種国語辞典より引用

ちなみに、
社労士試験勉強で使われる場合の
「論点」の意味合いは、

正誤判定のポイント」
という意味です。

資格試験は
「答えのあるゲーム」
です。

前提知識Ⅱ「として」の活用例

して(接続助詞)
岩波国語辞典:断定の意を込めて次に続けるのに使う。
新明解国語辞典ある条件(状況)を提示してそれから判断を導くことを表す。

「ものして●●

労務不能
して
傷病手当金の支給
(という判断

労務不能に該当しない
して
傷病手当金は支給しない
という判断)

再度:支給要件を見直す

(※1)傷病手当金の支給要件 
1:療養のため 
2:労務不能(労務に服することができないとき) 
3:継続3日の待期期間(労務不能の状態連続3日間

傷病手当金の
支給要件の3つ
独立した
並列な関係ではない
のですねぇ。

言い換えると・・・、

「3:継続3日の待期期間」
には、
労務不能の状態であること
という条件が含まれている。

労務不能は、
支給要件2と
支給要件3に
またがっている点が
特徴です。

ポイント整理

●労務不能は
 本来の業務に堪えうるか否かで
 保険者が判断。

●例外として、
(本来の業務に堪えられない)
 労務不能に見えても、
 相当額の報酬を得ている場合は
 労務不能に該当しない。

●労務不能ならば
 ⇒傷病手当金は支給する
●労務不能に該当しなければ
 ⇒傷病手当金は支給しない。

傷病手当金の支給停止が、勘違いを一層ややこしくさせる

(ここまで読んで、
疲れた人は、
読み飛ばしOKです。)

ここからは、
勘違いをしたまま
具体的な屁理屈を言って、
論点をズラせるか
考えました。

支給停止で論点をズラせるか?

勘違いちゃん
勘違いちゃん

傷病手当金には、
支給停止があるのを
ご存じでしょうか?

勘違いちゃん
勘違いちゃん

つまり、傷病手当金は
一時的に
支給が停止されることが
あるのです。

勘違いちゃん
勘違いちゃん

とすると・・・、
この過去問題のようなケースで
あっても、
支給停止になるケースが
あるように
思えませんか?

勘違いちゃん
勘違いちゃん

少し
モヤモヤしませんかねぇ。

C級講師
C級講師

労務不能ならば
⇒傷病手当金は支給する
しかし、
別途、
⇒傷病手当金の調整により
支給停止のケースがある。
と考えたわけですね。

C級講師
C級講師

とはいっても、
支給停止の
具体例は
報酬>傷病手当金
の場合です
ので、

C級講師
C級講師

例外の
「労務不能に見えても、
相当額の報酬を得ている場合
労務不能に該当しない。」
に該当してしまい

C級講師
C級講師

結局のところ
最後には
労務不能でなくなるのです。
(よって傷病手当金は不支給

勘違いちゃん
勘違いちゃん

でも
この過去問題は
報酬の多寡には
触れていませんよ。

勘違いちゃん
勘違いちゃん

これでは
正誤の判断が
出来ないんじゃ
ないですかねぇ?

C級講師
C級講師

う~ん
・・・・。

勘違いちゃん
勘違いちゃん

答えのないことのが
多い世の中で、
言い切れますかねぇ。

さあ、みなさんなら
この「勘違いちゃん」に
どのように説明してあげますか?

「正解へのアプローチ」のみを
教えてしまう
講師の方は、
おのが利口ゆえに
こういう
バカの間違いのロジック」は
理解していないケースが多いですね。

勘違いへの答え(種明かし)

実は、この過去問題の内容は
傷病手当金が支給されるまで
待期期間(継続3日以上)を
軽微な業務で賃金を得る場合において
その期間(3日以上)は

働いて賃金を得ていますが
労務不能と認められますか?
という問いかけの
文章構成(?)
文脈(?)
なのです。

過去問題(再掲載↓です。)を
もう一度
読んでみましょう。

被保険者がその本来の職場における労務に就くことが不可能な場合、支給があるまでの間、一時的に軽微な他の労務に服することにより、賃金を得るような場合には、労務不能に該当するものとして傷病手当金が支給される。

平成16年 健康保険法 問2 ーC


身も蓋もない話だが
バカの考えは
バカにしかわからない。

利口がバカにつきあうことは
骨の折れることだから、
誰もやりたがらない。

だから
バカなあたいが
利口になろうとする
過程を記しておく
「意義」がここにある。
とあたいは思う。

何を言っているのか?

と思ったあなたは
おそらく利口なのです。
(もしくは大バカだが、
大バカはここまで
文章を読んで来られない
ハズなので)
安心してください。
あなたは利口です。

興味をもって
読み進めてこられたは
お茶目なお利口さんです。

発展:軽い業務は気をつけろ

労務不能の判定は
本来の業務に堪え得るか否か」
ですので、
「(他の)軽い業務
と書かれていたら
労務不能の場合と
労務不能でない場合と
2パターンがありますので、
オリジナル整理表つくりました。

本来の業務に堪え得るかで判定です。

「い」:賃金を得ているとか
労務不能に関係する気がするけど。

「ろ」:他の軽い業務に服するとか
労務不能に関係する気がするけど。

C級講師
C級講師

「い」:賃金とか
「ろ」:軽い業務とかで、
判定すると
判定の線引きが
図表通りには
ならない
ことがわかります。

このワードがきたら
労務不能だ!!と
整理しても
断言できない点が
イヤラシイ。
「本業堪え得る」
抽象的過ぎるぅ~。

感想

受験生は、
こんな些末な事を気にせずに、
無視して、
他の基本的な知識習得を
優先して
進めればいいのです。

「これは、これ。」
「あれは、あれ。」

という
問題暗記型で
「割り切る」
考え方で
腹落ちさせても
いいでしょう。

しかし、
私のような、
偏見に満ちた

ひねくれもには、
これを書いている現段階では、
正直に申し上げると・・。

「ここまで書かないと、
 受験生の皆さんは、
 心から

 腹落ちしないのではないか。」
とも思う過去問題です。
(つまり、腹落ちしません。

試験テクニックとして、
「作問者が問いたい知識はどこなのか?」
「どの知識を確認しているのか?」

「素直に」
とらえる練習
必要だとも感じました。

試験問題の正解を求める考え方
(論点というより文章理解力)

実務の問題解決の考え方
(実務では論点は複数存在する)
違いとも
感じました。

私は、
残念ながら
問題文の

文章理解力が
乏しい
のです。

作問者は、
なにも、複雑で
難しいことを
出題しているわけではないです。
考えすぎないように。

社労士試験勉強で使われる場合の
「論点」の意味合いは、
正誤判定のポイント」
です。

解法の思考の順を記してみます。

【第一段階】
労務不能かどうか保険者が判断し、
傷病手当金の支給は決まる
●労務不能ならば ⇒傷病手当金は支給する
●労務不能に該当しなければ ⇒傷病手当金は支給しない。

【第二段階】
●例外として、 
(本来の業務に堪えられない)
  労務不能に見えても、
  相当額の報酬を得ている場合は
  労務不能に該当しない。

例外を最初に考えると、
情報不十分となり、
解答が導けない
おかしなことになりますので
注意してください。

詳細が書かれていない場合は、
原則を先に考えましょう。

受験生は、勘違いしないよう
お気をつけ下さい。

以上、最後までお付き合いいただき
ありがとうございました。
そして、幸運を祈る。

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