§有期労働契約の更新(労働契約法19条)

労働一般

先日、有期雇用契約の雇止め予告について取り上げましたが、
あっさり記載したので、
実務上で容易に雇止めができる印象を
持った方がいるかもしれません。

しかし、そのようなことありません。

今回は実務で重視される条文
前回のは厚労省の告示で罰則はありません。)
を取り上げます。

解雇を行うには、
正社員、
無期労働契約者、
有期労働契約者に関わらず
「解雇権濫用(らんよう)法理」というのがあって、
これを遵守することが、大前提です。


解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利を濫用したものとして、無効とする。(解雇権濫用法理)

労働契約法16条

次に、
客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当とする」
のは、(正社員の)場合よりも、
有期労働契約者契約期間中の解雇は厳しく
(狭く:有期労働契約者の保護が強化されるように)
なっています。・・・(労働契約法17条)

その次に、
契約期間終了時の雇止めについては
どのようなのかということですが、
次のような法律があります。

労働契約法19条

(有期労働契約の更新等)
労働契約法19条
 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

主な判例

  • 日立メディコ事件
  • 東芝柳町工場事件

ケースバイケースで判断がなされているようです。
実務上は専門家(弁護士・社労士・労基署)のアドバイスをもらうことをお勧めします。

参考資料:独立行政法人労働政策研究・研修機構 資料

過去問題


有期労働契約が反復して更新されたことにより、雇止めをすることが解雇と社会通念上同視できると認められる場合、又は労働者が有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合に、使用者が雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇止めは認められず、この場合において、労働者が、当該使用者に対し、期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなされる。

平成29年 問1ーE

答え:誤り ✕

正しくは、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で、当該申し込みを承諾したものとみなす。


問題文の誤り部分は、労働契約法18条(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換(無期転換)の条文を引用した、ひっかけ問題です。
条文ごとに理解しているかが、問われるということなのでしょう。

通算契約期間5年超の労働者の申込があるとき、使用者は無期転換を承諾したものとみなす。

感想

有期労働契約者の解雇については、
法律上で保護を手厚くしてきているのは感じました。
労働契約法は、比較的新しい法律(平成20施行)なので、
まだ、世の中に浸透していない懸念が残ります。
訴訟になる前に適正な対応ができる使用者が増えることを
願うばかりです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました