映画「シン・ウルトラマン」レビュー・ザラブ星人(にせウルトラマン)について

雑記


ザラブ星人は「星の破壊を使命・喜びとする」凶悪宇宙人。
映画「シン・ウルトラマン」のネタバレを微妙に含みますので、
まだ、映画をご覧になっていない方は
その点に、ご留意ください。

元祖・ザラブ星人

ザラブ星人はズル賢く、まるで工作員のような活動をします。
人類がウルトラマンに寄せる信頼を揺るがすために、
ザラブ星人は「にせウルトラマン」に変身して都市を破壊するワルサをします。

2022年公開 シン・ウルトラマンでのザラブ星人

シン・ウルトラマンは庵野秀明さんが脚本に携わっていますが、
庵野さんが2003年ころに、ザラブ星人についての説明で、

「お仕事で地球にやってきて、
 知的生命体である人間を滅ぼすのがお仕事なんです。」

「ウルトラマンと逆なんです。」

とおっしゃっていたのを思い出しました。

お仕事気質

 ここからは、私の邪推ですが、
「お仕事」という言葉を
私たちが日々、忙しいときや説明を省きたいときなどに
なかば「言い訳」として
便利に使ってしまっている側面を
「薄っぺらい」と手厳しくとらえている
ように思えます。

つまり、上っ面だけで、
中身や背中(がもつ意味)を欠いている
(=中身のない=>心ない)を意図する
のではなかろうかということです。

「仕事」ならば、それは許容されるのか。同時に「にせもの」という発想。

「仕事(職業)という後天的な立ち振る舞い」

「人それぞれ自然に備わった立ち振る舞い」
この2つのギャップは少ないほど
私はその人に好感を持ちます。

正直に申し上げると、
実はそういうギャップのない人には
めったにお会いしたことがありません。

「仕事(職業)」というものには
幼いころの本来の自分を見失わせてしまう
あやうさ(にせもの感)がついてまわる
気がいたします。

本物(自分本位)と
にせものの対立軸をもたせて
ザラブ星人と
ウルトラマンを見比べると、
何か発見があるかもしれません。

自分事におきかえ
過去の自分の仕事を自省すると、
残念ながら
私は、「お仕事」気質的な振る舞いを
いくつか思い出すことができてしまいます。

性悪ザラブ星人のことを
真っ向から批判できるかどうか
疑問が残ります。

「お仕事気質」(やらされ感)から自分本位になるには

自然に備わった境遇や才能に立ち返る
ことで、誰の真似(にせもの)でない自分本位の
「人それぞれ」になるのかもしれません。

つまり、ザラブ星人が、にせものでなく自分本位になる方法は、
ウルトラマンを真似することではなくて、
本来の生まれ持ってのザラブ星人に立ち返ること
でしかかなえられなくて、
そこにザラブ星人の本来の使命が
見つかるようにも思えるのです。

ただし、
「破滅に快感を覚える」性悪ザラブ星人では、
映画と同じ結末になってしまうので、
目指すべき本来のザラブ星人が、
(もしもあったとしたら、)
その姿は「全体を見渡す冷静な理性」を備えていないといけません。
(その後の理性的なメフィラス星人の登場は、偶然なのか?
ザラブ星人とメフィラス星人の対比を意図したものなのか?)

ザラブの形

ザラブ星人の映画での例の形の解釈に関しては、
鑑賞者(受け手)にまかせられ、
今後も製作者側は言及しないと思いますが、
社会への皮肉をオブラートにつつんで
表現していると感じます。

「ザラブ星人、どのような形で登場するのか?」
ご期待ください。
是非、映画館にてお楽しみください。

感想

ウルトラマンやウルトラセブンは
戦後の昭和の大人たちが
当時の社会風刺や社会問題を背景とした
テーマを設定していますので、深読みすれば
単なる娯楽で収まりきらないところがあります。

映画「シン・ウルトラマン」は
そういう点で多くの世代に受け入れられ、
長く愛される映画になる気がしています。

年齢制限は無い映画です。
CGにこだわって戦闘シーンがグロテスクになるようなことなく、
6歳未満(小学生未満)の方でも安心して見ることができます。

(上映途中で怖くなって泣き出してしまい・・・、
映画館から出て来てしまったなんてことはありません。)

あえてコミカルなシーンも折り込んでいて、お子さんへの配慮が見受けられます。
配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹 4世代で鑑賞できる映画です。

2022年の新語流行隠語大賞は
ザラブる」
で決まりデアル。

本作品、
個人的に、ザラブ星人が一押しです。

以上、ありがとうございました。
外部リンク 映画「シン・ウルトラマン」公式サイト
こちらもおすすめ:ウルトラ害虫大百科 (キンチョー)
あなたのタイプは?:がいちゅう診断(キンチョー)

余計なこと

教養と蘊蓄(うんちく)を深めたい方は、
リピア(ウルトラマン:神永 新二)役の
斎藤工さんが劇中で読んでいた
古典:「野生の思考」クロード・レヴィ=ストロース著(1962年)¥4,800+税 をお読みください。

 どの文明も、自己の思考の客観性志向を過大評価する傾向をもつ。それはすなわち、この志向がどの文明にも必ず存在するということである。われわれが、野蛮人はもっぱら生理的経済的欲求に支配されていると思い込む過ちを犯すとき、われわれは、野蛮人の方も同じ批判をわれわれに向けていることや、また野蛮人にとっては彼らの知識欲の方がわれわれの知識欲より均衡のとれたものだと思われていることに注意をしていない。

「野生の思考」 第1章 具体の科学より抜粋 P3

レビィ=ストロースちゃんは
「構造主義」という考え方・方法論を唱えた人です。
西欧中心的なイデオロギー(=観念形態)
を真っ向から否定したようです。
肩書は哲学思想家です。

以上、お読みいただきありがとうございました。

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