$小説レビュー 社労士試験関連法律

横断

社労士関係法律の小説を2冊読みましたので、紹介します。

ディーセント・ワーク・ガーディアン 2014(平成26)年 双葉文庫 605円

著者:沢村凜

主人公は労働基準監督署に勤める主任監督官(国家公務員)。
労働基準法・労働安全衛生法・労働者災害補償保険法
このあたりの知識が物語中に出てきます。

「転落の背景」
労災死亡事故の発生の当時に
作業主任者(責任者)はどこにいたのか?
複雑な人間関係のなかで浮き彫りになる真実
資金繰りに苦しんでいて、ほんとうは、畳んだほうがいい会社。
いまやめると、借金の山だけが残る。
司法官・行政官としての主人公のやりきれない思いがつづられる。

私の読後感。
天知茂さん主演の刑事ドラマ「非情のライセンス」
エンディングソングが流れてきて、
何ともやるせない気持ちになる。


生まれた時が悪いのか、
それとも俺が悪いのか、
何もしないで生きて行くなら
それは、たやすいことだけど。

天知茂「昭和ブルース 」1973(昭和48)年 
『非情のライセンス』エンディングソング

ひよっこ社労士のヒナコ 2019(令和元)年 文春文庫 880円


著者:水生大海
本作品とは違いますが、過去に映画化等された作品をもつ推理小説作家さんだそうです。
映画化されている作品は『少女たちの羅針盤』2010(平成22)年
テレビドラマ化『ランチ合コン探偵~恋とグルメと謎解きと~』2020(令和2)年

「握りたい手は」
専門業務型裁量労働制事業場外労働に関するみなし労働時間制を
部門毎に採用した企業が、
「業務見える化ツール」を導入する。
残業代を巡っての部門間の摩擦から
ことの本質に主人公がアプローチする。
「飾りより、灯りより」
ブラック派遣会社でよくある残業時間切り捨ての話。
労働搾取されていても行政指導が入らない
放置状態の実態。(派遣会社の闇※後述)
会社は正社員クズでもクビに出来ないが、
派遣社員ならばクビに出来る。
クビの理由は派遣社員の当人とは関係ない
組織の理由であることが大いにある。
本当の理由は意外なところに・・・、
それが嫌なら資格を取れ。
「綿菓子とネクタイ」
ブラック寄りの会社で働く、
「大卒アルバイトと雇われ店長」の話。

本小説は、社労士2名(桑山忠孝さま・佐藤広一さま)の取材協力を受けているとのことです。

おすすめポイント


2冊とも、短編を集めたものなので、間に休憩を入れながら読み終えられます。
現実にそこまでするかなぁ?
そんなに運良くトントン拍子で情報あつまるかなぁ?
という疑問は残りますが、社労士試験問題とは異なり、
法律を実務に適用するイメージが持てる点が
楽しめました。

また、ハラハラドキドキで
後味スッキリの解決や
ハリウッドの娯楽映画のような
勧善懲悪のエンディングを
期待してはいけません。
(エンターテインメント要素はありません。)
そういう意味で、大人向けの小説です。


私たちが生きる現実社会を複数の視点で観察すれば、
そうならざるを得ないです。
ただ一人の人間が、大きな社会で生きてゆく中で、
それぞれ貢献しえることを成してゆくことを
陰ながら賞賛するような小説です。

人一人では成しえないことが
社会では大半であることが
理解できると同時に、
最後に、かすかな光は見えてくる小説です。

私は法律知識が浅いので、
「このセリフは、法律のどこのことをいっているんだろう?」
「そんな、きまり(法律等)あったっけ?」
と、試験勉強テキストで確認することが発生しました。

小説と直接関係ないが、・・・ITドカタを連想した。

※派遣会社の闇について(個人的意見)は、次のページ

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