派遣労働者については、
原則通りには行かないことがあります。
(健康保険法ができた当時は
派遣労働者という就業形態がなかったわけですから・・・
致し方ないとは思います。)
例外として暗記しておいても
私は、すぐ忘れてしまいますので、
「ナゼなのか」少し理由を類推(邪推?)してみました。
現物給与の報酬と賃金(健康保険法・徴収法)
現物給与は派遣元
(現物給与の価額)
健康保険法46条
法46条
1 報酬又は賞与の全部又は一部が、通貨以外のもので支払われる場合においては、その価額は、その地方の時価によって、厚生労働大臣が定める。
2 健康保険組合は、前項の規定にかかわらず、規約で別段の定めをすることができる。
1.現物給与の価額の適用に係る取扱い
平成25年2月4日保保発0204第1号
(1) 現物給与の価額の適用に当たっては、被保険者の勤務地(被保険者が常時勤務する場所)が所在する都道府県の現物給与の価額を適用することを原則とすること。
(2) 派遣労働者については、派遣元事業所において社会保険の適用を受けるが、派遣元と派遣先の事業所が所在する都道府県が異なる場合は、派遣元事業所が所在する都道府県の現物給与の価額を適用すること。
(3) 在籍出向、在宅勤務等により適用事業所以外の場所で常時勤務する者については、適用事業所と常時勤務する場所が所在する都道府県が異なる場合は、その者の勤務地ではなく、その者が使用される事業所が所在する都道府県の現物給与の価額を適用すること。
(4) トラックの運転手や船員等の常時勤務する場所の特定が困難な者については、その者が使用される事業所が所在する都道府県(船員については当該船員が乗り組む船舶の船舶所有者の住所が属する都道府県)の現物給与の価額を適用すること。
つまり、次のような表になります。
日々、毎週、毎月と頻繁に勤務先が変わる人や
そういう可能性が高い人は
報酬や賃金の計算が非効率だから、
被保険者の使用される事業所の都道府県の価額を適用する
ということでしょう。
価額が派遣先の変更の都度変わるとなると、
給与計算が毎回面倒くさくなるからね。
給与から賃金や報酬を計算して
社会保険料を納めるのは、派遣元の事業主。
事業主(給料を計算して払う側)への配慮ですよね。
たぶん・・・。
毎月同じ現物(給与)なのに、
派遣先(の都道府県)が変わるごとに
現物の価額が変化していたら
労働者側も「納得しかねる」と思う。
もしも、派遣先の都道府県としたら
1箇月に2か所以上の都道府県で勤務したら、
どこの時点の都道府県の価額を適用したらよいか
決めておかないと混乱するしね。
過去問題
現物で支給される食事や住宅は、厚生労働大臣が都道府県ごとに告示で定めた現物給与の価額に基づいて報酬に算入する(健康保険組合が規約で別段の定めをした場合を除く。)。なお、現物給与の価額の適用に当たっては、被保険者の勤務地(被保険者が常時勤務する場所)が所在する都道府県の現物給与の価額を適用することを原則とし、派遣労働者については、派遣元と派遣先の事業所が所在する都道府県が異なる場合、派遣先事業所が所在する都道府県の現物給与の価額を適用する。
平成25年 健康保険法 問1ーC
答え:× 誤り
「派遣先事業所が所在する」ではなく、「派遣元事業所が所在する」です。
紛らわしい出題(最低賃金法)
最低賃金は派遣先
最低賃金は地域(都道府県)によって決まっています。
(地域別最低賃金の原則)
最低賃金法9条
1 賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障するため、地域別最低賃金(一定の地域ごとの最低賃金をいう。以下同じ。)は、あまねく全国各地域について決定されなければならない。
2 地域別最低賃金は、地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない。
3 前項の労働者の生計費を考慮するに当たつては、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする。
(派遣中の労働者の地域別最低賃金)
最低賃金法13条
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第44条第1項に規定する派遣中の労働者(第18条において「派遣中の労働者」という。)については、その派遣先の事業(同項に規定する派遣先の事業をいう。第18条において同じ。)の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金において定める最低賃金額により第4条の規定を適用する。
(派遣中の労働者の特定最低賃金)
最低賃金法18条
派遣中の労働者については、その派遣先の事業と同種の事業又はその派遣先の事業の事業場で使用される同種の労働者の職業について特定最低賃金が適用されている場合にあつては、当該特定最低賃金において定める最低賃金額により第四条の規定を適用する。
つまり、表にするとこういうこと。
(健保上の)現物給与と逆です。
最低賃金法は
各地域の物価に合わせる。
派遣元:900円 派遣先:1,000円の場合
派遣先の1,000円ですね。
でもさぁ~
反対の場合は、
派遣元:1,000円 派遣先:900円となって
派遣先の900円。
物価が安ければ
大丈夫なのかなぁ。
過去問題
労働者派遣法第44条第1項に規定する「派遣中の労働者」に対しては、賃金を支払うのは派遣元であるが、当該労働者の地域別最低賃金については、派遣先の事業の事業場の所在地を含む地域について決定された地域別最低賃金において定める最低賃金額が適用される。
令和1年 一般常識(労一) 問4 ーA
答え:〇 正しい
「派遣先」の最低賃金額が適用です。
以上、ありがとうございました。
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