打合せで「ヘタな話~、・・・です。」ということをおっしゃる方がおられて、これは話の流れ(文脈)から想像するに
きっと、「ぶっちゃけて言うと、・・・です。」「正直にお話ししますと、・・・です。」とほぼ同義なのではないかと思い、聞き流していました。ところが、どうもこの方の口癖のようで、何度も耳にすると、それが気になってしまい、話の中身が頭に入ってきません。私の中で何かが引っ掛かっていました。
後日「ご本人に、その言葉どういう意味で使っているのか教えて下さい。」と聞く勇気は持てませんでした。
(だって、言葉遣いについて、ヘタに口に出したりしたら、関係をこじらせるだけで、何のメリットもありませんから。)
そこで、私が引っ掛かっていた“素朴な”疑問を思い切ってここに記します。
◆ひとつひとつ紐解く
前提として、私の解釈では、
「美味い(旨い:ウマイ)話」があり、またその反対に「不味い(マズイ)話」があります。
次に、上手について私の思う意味を記します。
A:上手(ジョウズ)な言い方。上手(ジョウズ)な絵。
B:上手い(ウマイ)言い方。上手い(ウマイ)絵。
C:拙い(マズイ:つたない)言い方。拙い(マズイ:つたない)絵。
という言い方はあるとは思うのです。
A:上手な(ジョウズな)言い方。上手な(ジョウズな)絵。
B:上手い(ウマイ)言い方。上手い(ウマイ)絵。
C:下手な(ヘタな)言い方。下手な(ヘタな)絵。
これもわかります。
AとBは同義でA=Bが成り立つ関係です。そして「AとB」の反対の意味が「C」という関係です。
「下手(ヘタ)な話」があるとすると、その反対は「上手い(うまい=>じょうずな)話し」があるということになりはしないでしょうか?
A:上手な(ジョウズな)話。 <=これが私の語彙には無い
B:上手い(ウマイ)話。 <=これは音として成立するが、私の語彙の中ではこの漢字では無く「旨い」の方。
C:下手な(ヘタな)話。 <=ゆえに、これは「ザワザワ違和感」する。
◆視点を変える
「”じょうずな”話」と「”へたな”話」
じょうずな話はどういうときに使うのでしょうか?
「・・ちゃんはお話が上手(じょうず)ね。」「・・ちゃんはお話がヘタね。」うーん。文法的に成立します。意味も伴います。
そうか、「ヘタな話、・・」という表現の意図するところは、
「私は、話下手だけど、どうか聞いてください。」
という意味なのかなぁ?
いやいや、そんなことは無いでしょう。(そういった文脈で使われていなかったから。)
◆違和感の正体
でもなぜか、「ヘタな」と「話」をくっつけて冒頭に使うには、何かザワザワ感が残ります。相性が悪い感じ。映画「アウトレイジ」の場面で使われそうなイメージ。
こういった使い方です。
新明解 国語辞典 第7版
へた(下手):見通しを誤って慎重さを欠いた適切とは言えない対応をすること(様子)。
そうか、「私の話は、適切とは言えないかもしれないけど、どうか聞いてください。」の意味で使っていたのかなぁ。
でも、ところどころ、話の流れ(文脈)から考えると、つじつまが合わない印象なんだよなぁ。
◆口ぐせは無自覚
この方の立場になって想像するに、おそらく誰かが使っているのを聞いて、マネして使っているのであり、必ずしもこの方の考えを的確に表しているわけではないのだと思うのです。
「口が悪くても、気のいい、おじちゃん、おばちゃん」は世の中に沢山います。
◆枕言葉 「○○な話」
う~ん。どこかの方言だったりするのかなぁ?
あああ!これはもしや”関西弁”。大阪の言葉か!!!???
関西弁を切り取ってマネしているのか??
関西方面の方で「正味の話」=>ぶっちゃけ、実は、正直な話という具合につかいますよね。
あと、お金の話をするときに「やらしい話」とか枕詞に使うのを聞いたことがあります。
「もぅ~。中途半端に、関東弁に関西弁の用法を紛れ込ませんといて!!」「気持ち悪い。」「いろいろ考えて損した。」「しかも、使う文脈間違えているし。」
私の結論: 「ヘタな話」を枕言葉のように使う場合は、 文脈上その後に 「見通しを誤って慎重さを欠いた適切とは言えない対応をすること(様子)」 が続いてこないと、 枕詞として機能しません。
ここまで書いておいて、何なんですが、・・私は、「ヘタな話」という言葉、自分では今後も使いません。
だって「ヘタをこきそう」なんですもん。
下手の考え休むに似たり。
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